コイン★悪い男の純情
 ホテル5番街の中に入ると正面に、部屋ナンバー、価格、空き室を表示したパネルにキーが掛かっている。

 「どれでも好きな鍵をお取りやして」

 ボックスのカーテン越しの小窓から、年配のおばさんの声が聞こえた。

 「501号室がええわ」

 絵美がホテルの最上階の部屋の鍵を取った。

 「お帰りになる時はフロントまで電話しておくれやっしゃ」
 二人は狭いエレベーターで5階まで上がった。

 「ビジネスホテルみたいやろ。いっこもケバイ事あれへん。そやから、うちはこのホテルが好きやねん」

 絵美はこのホテルの馴染みらしい。

 二人は部屋に入った。

 部屋いっぱいにキングサイズのダブルベッドが置かれている。絵美が言うように、シンプルでラブホテルらしさが全くない。

 6畳位の部屋の横にトイレ、洗面台、バスルームがある。

 「シャワー一緒に入らへん」
 「いいよ」

 純一がシャワーを使っていると、絵美が入って来た。


 「背中洗ったろか」


 絵美がタオルにボディソープを付けて、純一の背中を洗い出す。

 「やっぱりや。うちの想像した通りや。あんた、筋肉質のええ体してるわ」
 「・・・」

 「うちも洗ってくれへん」

 純一が急いで絵美の背中を洗い、逃げるように先にバスルームを出た。

 純一がベッドに寝そべっていると、絵美が体にバスタオルを巻いてベッドに来た。


 「何で逃げるの。あれからがええとこやったのに」


 (逃げたのじゃない。じらしたのだ。盛りの付いた雌豹めが)


 純一は心の中で女を見下していた。

 
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