摩天楼Devil
嬉しかったけど、寂しかった。


帰りも別々だった。


どのみち、今日は“塾”だから帰れなかったけど、一声かけてほしかった。


しょぼんとしながらも、叔父さんの家、もとい篤志さんのアパートへ行くと、1台の黒塗りの外車が止まっていた。


以前、刑事ドラマで、ヤグザ者がこんな車に乗ってた。


「ま、まさか、叔父さんが生活苦でしゃ、借金が?」


よく、暴力を振るわれる、とか言うよね。


叔父夫婦が心配なのに、足がすくんで動けずにいた。


が、アパートへ続く外階段から声がしてきた。


「待ってくれ。兄さん!」


グレイのスーツを着た、長身の男性が下りてきて、その車の横に立つ。


それを追いかける、同じく長身の男性。


最初の長身男性が、その彼に言う。

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