摩天楼Devil
「じゃあ、なんで今日掃除?自分で?」


「普段から綺麗しておくものだろ」


ふと、不安になった。


「急に、いなくなったりしませんか?」


掃除機の音がやむ。

彼はそれを、普段置いている、部屋の隅に戻した。


「妃奈。玄関は終わったの?」


まるで聞こえなかったといった感じで、平然と訊く。


どうして、答えてくれないの?


「篤志さん……」


――好きになっちゃったんです……だから、答えてください。


“急にいなくなったりしませんよね?”


「――お、終わりました。次は……」


「もういいよ。浴室はお風呂の時でいいし、疲れてないか?余裕あるなら、勉強しよう。期末試験の約束忘れてないだろ?」


「はい。ちゃんと覚えてます」


その時だ。
けほっ、と彼が咳をした。


「風邪ですか?大丈夫ですか?」


「いや、ホコリでむせただけだ」


それにしたら、その小さな咳は、勉強中も数回聞いた。


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