摩天楼Devil
彼はたまに水を飲みに席を外した。


心配だったけど、大丈夫と言い張るし、勉強しろ、と言われるので、私は素直に従った。

帰りに、また送ってくれようとしたけど、まだ明るいし、断った。
篤志さんの携帯が鳴ったのもあり、この場で別れた。


階段を下りて、ちょっと歩くと、見覚えのある車があり、軽くクラクションを押された。

足を止めると、運転席から人が降り、「やあ」と手を上げた。


その人は一度、会ったことのある男性。


「篤志さんの……お兄さん……?」


「ええ、僕は、藤堂遼、アイツの兄です」


気をつけろ、近付くな、と言われた理由が分からない。


すごく穏やかで、篤志さんに似た優しい笑顔だった。


「篤志さんなら部屋に――」


「君に用があったんですよ。たまたま、様子を見てきてたという部下が、君がいるのを確認したらしくってね」


部下が?
レイさんにしろ、なんでそんなに、様子を窺いに来るの?

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