摩天楼Devil
「寝たほうがいい」


あまりに外れた答えに、へ? と顔を上げた。


女の子から告白されたとは思えないほど、冷静な表情だった。


「どうやら、よほど熱が高いみたいだ。分かるよ。調子が悪いとき……一人で寝てると寂しいよな。
“ママ”も“友達”もいるんだから、気に病むことはない」


ただ単に、寂しくなって、告白した。または、気の迷いだと判断されてしまったらしい。


「あ、篤志さん、私は……本当に……」


「妃奈、帰るよ。ゆっくり休め。じゃあな」


篤志さんは急に冷たくなった。


背を向け、出ていくまえに、片手で軽く振っただけで、こちらを見ることなく、部屋を出ていった。


元気なときなら、追いかけて、面と向かって、好きだ、と告白し直したかもしれない。


でも、動けずに閉まったドアと、玄関から微かに聞こえてくる会話を聞いてた。


「今日はわざわざありがとうございました」


「いえ、お大事に……では失礼します」


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