摩天楼Devil
声を失い、立ち尽くした。


はじめから、備え付けられてた、ベッドと机以外、空だった。


“急にいなくなったりしませんよね?”


いつかした質問。答えはあやふやなままで……


「なんで……?」


「――すまない。引き留められなかった。それに、妃奈には言うなって」


叔父さんがいつの間にか、背後に立つ。


「そんなの、そんな約束守らなくてもいいじゃない!なんで、教えてくれなかったの!?何度か訪ねてきてたのに……!」


叔父さんの肩を叩いても、彼はただ詫びるだけ。


やや間を置いて、紙袋を渡してきた。


そこには、ノートと参考書が入ってた。


「オススメだって。読んで勉強しろって。ノートは篤志君が、妃奈が分かりやすいように、予想範囲と学習法をまとめてある、って」


私は紙袋を抱きしめたまま、固まってた。


「あと、服の料金はバイト代にやるって。もういらないから、って」


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