摩天楼Devil
彼も呆れ口調だったのに、なぜか楽しそうだった。


「それも可愛いもんさ。一生懸命だしな。ウチのことを心配してくれるのも事実だし」


「……血が繋がってるから、だろ。ま、ウチみたいに、利用価値があるかないかで、ガキを判断する家もあるけど」


そう鼻で笑うと、おじさんは軽く、額を小突いた。


「なんだよ?」


「少なくとも、俺達夫婦にしてみたら、篤志君も、ヒナも“同じ”なんだよ」


――は? 同じ?


彼はアハハと笑うと、開店準備の作業に戻り、奥の調理場に向かって言う。


「ヒナぁ、ちゃんと開店前には帰れよ。ガキを居酒屋で働かせるわけにはいかないからな!」


「私、ガキじゃないもんっ」


と、まさに子どもっぽい声が返ってきた。


そんな二人の会話を聞きながらも、おじさんの言った“同じ”の意味を考えてた。


ヒナという姪を、娘みたいな存在だと言ってた。


自惚れていいのかな……


“息子”みたいなものだと言ってくれたんだ、と。


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