摩天楼Devil
ヒナという姪は、まだ高校らしい。


声はまだあどけない、少女といった感じで、育ての母のような冷徹なもの、

レイさんのような、酒やタバコで少しばかりハスキーに変わってしまった声とも違い、無邪気な印象があった。

会ってみたいと思ったけど、この日は結局、自分がいる間に、彼女がこちらに顔を見せることはなかった。


それは、2月。


寒くて、やたらおばさんのお手製のおでん(冬季限定で出してるメニューらしい)が食べたくなって、店に行ったときのこと。


カウンターで、おじさんが嬉しそうに座ってた。


「おじさん、またサボってんの?開店準備は済んだの?おばさんは?」


「いや、こっちの下準備は済んでるって。かみさんは、篤志君も好きなおでんを作ってる最中」


おじさんはニヤニヤ、本当に嬉しそうだ。


おでんなんて、飽きてんじゃないか、と思ったとき、


また、例の音が――


ガッシャーン!、と。

バサバサ、とも聞こえた。

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