摩天楼Devil
「……それ以外は、多少好きに時間を過ごせるわけですね」


「ああ。ただ、一つ忠告しておく……女には気をつけろ。

地位や金目当てのハイエナみたいな奴らが寄ってくる。

お前の相手はいずれ、相応の人間から選ぶ。とにかくそれまでは、神崎の名にふさわしい行動を取るように……」


灰皿で、彼はタバコを潰す。


それを見ながら、分かりました、と答えた。



夏休みの前日に、アトリエにあった着替えなど持ち、神崎家に移った。


アトリエを持つ男性の割りには、家のデザインは日本家屋。


木造の門に迎えられた。


家政婦も、紺のワンピースで統一してる藤堂家と違い、スカートにトレーナー、上に前掛けといったものだった。


一応、笑顔で迎えてくれたが、じろじろと観察してくる。


目が合えば、おほほ、と笑い、顔をそらす。

なんとなく、「俺の部屋には入らないでほしい」と命じた。


「それでは、お掃除は?」


「自分でする」


「社長に叱られてしまいますわ」


困ってるといった感じはなく、明らかに残念がってる。


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