摩天楼Devil
掃除と称して、詮索する気じゃないのか? と思ってしまう。


「いや、大丈夫だ。なら、逆に覗かれて困る、とでも義父に伝えてみるか」


「と、とんでもございません! そこまでおっしゃられるなら……分かりました。ぼっちゃまのお部屋には近づきません」


女性は焦ったように首を振ったかと思えば、キッと睨む。


そして、俺の部屋に案内した。


「では、失礼いたします。ぼっちゃま」


一礼し、去ろうとする彼女を引き止めた。


「その呼び方はやめてくれ。名前でいいから」


「分かりました。篤志様」


勝気なタイプらしく、また怒ったような声色。


木島さんに、「嫌われたな」と呟いた。


「あの方はああいう人ですから。奥様がご存命のときも臆せず、気に入らないことがあれば、反論しておられました。

社長は、そういう気の強さを珍しがって、雇っておいでです」


「そうか。この家でも俺は――」


孤立するんだろうな、と言おうとした。


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