摩天楼Devil
が、木島さんに遮る。


「本当の家族が欲しいのであれば、ご自分でお作りになればいい。ま、あなた様は逃げる方が楽なんでしょうね」


俺はまた、いつかのように彼の言葉に腹を立てた。


「逃げる? 逃げてはない!だから、現にこうして――」


「神崎家に来られた?違うでしょう。ただ、流されているだけですね。

どこが立ち向かってるんでしょう?また、自分は孤独だ、と被害者ぶってるだけでは?」


思わず、木島さんのネクタイの結び目を掴んだ。


彼は動揺もせず、冷ややかな視線を送る。


「自分で勝手にこれでいいと判断して、勝手に一人になった。まさに、ひとりよがり。

それで大切な人間が満足してるとでも?幸せになるとでも考えておいでで?

わたしは何のために、屋上に“あの方”をお連れしたんでしょうね。わざわざ、通学路から」


――彼女のことか……


俺は手を離し、部屋に入ろうとした。


木島さんは、歪んだネクタイを直しながら言った。


「泣きながら、笑ってました」


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