摩天楼Devil
例のホテルに着くと、一瞬寒気がした。
普通に見れば、ただの高級ホテル。
スイートルームだって、女の子が素直に喜ぶ、可愛いタイプから、セレブ、大人なデザインまで完備されてる。
ランクもある。
政治家なんかが、隠れて使用する場合も、秘密にしてもらえる。
もちろん、セキュリティも万全だ。
それだけなら、便利なおかつ、安全なホテルなんだ。
俺にとっても。
「妃奈……っ」
俺は小さく叫び、飛び込むように、自動ドアをくぐる。
フロントに着くと、何度か会ったことのある、フロント係がいた。
「ああ、とうど……いえ、神崎篤志様、お久しぶりですね」
「挨拶はいい!兄さんがいつもの部屋を取ってるはずだ!」
「ええ、先ほど帰ってこられました」
「先ほど、っていつだ!?」
「1時間になりますでしょうか……あ、でも誰も寄せつけるな、と。篤志様ですから、お話しましたが……」
血の気が下がる。
ずっと、ずっと恐怖していたこと。
プラモデルなんかどうでもいい。
ランドセルも、あんたに傷つけられてきた、なにもかも……もうどうでもいい……!