摩天楼Devil
クールに、逆に熱くなる弟を見据えてた。


俺は馬乗りの状態で、ナイフを振り上げた。

喉元めがけて、ナイフを下ろそうとした時だ。


――やあぁぁ!!


静かだったベッドの上から、女の子の悲鳴が。


「……妃奈!?」


冷静を取り戻したというべきか、逆にまた焦ったというか、


俺はベッドに駆け寄り、中央に飛び乗り、彼女を抱きしめた。


「……だめ……そんなこと……しちゃ……兄弟なのに……」


「兄じゃない!」


「でも……」


「もういい!やめろ!自分のことを考えろよ!なんで、なんで付いていった!?俺はなんのために……」


気持ち殺して離れたんだ……


「……連絡待ってたの……ずっと……次話せたら、また会ってくれるか確かめたくて……でも――」


俺はしなかった。


「妃奈、ごめん……俺は……」


「分かってる。篤志さんの気持ち……」


両想いがバレてしまったと思った。

けど、妃奈は間違ったことを言った。


「嫌われてるって分かってた……避けられてることも……でも、はっきり言ってほしかった……

ううん、私ね、自分勝手なんだ。嫌われててもいいから、会いたい、って思っちゃったの……」


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