わたしの姫君
右耳のすぐ真横で声がして、ルシアは驚いて振り返った。
ちょうど、声の男が、飛びかかってきた魔物を剣で一振りし、その動きを完全に停止させたときである。
枝切れ一振りするかのように、軽々と剣を振り回すこの男を、ルシアはよく知っている。
「……カイン。あんた、どうしてこんなところにいるのよ」
言いながら、いまだ数の減らない魔物を魔術で打ち払いながら、背後のカインと呼んだ男に問いかけた。
「それはこちらのセリフですよ。こっちはどれだけ必死に貴方をお探しだと思っているのですか。途中で気配を消してしまわれるし……」
カインも話しながら、器用に剣を振り回した。
彼が難なく振り下ろした瞬間、切っ先から光の波が獣めがけて素早く走った。まるで蛍の集団が、目にも止まらぬ速さで駆けているようだった。光は魔物に体当たりをすると、途端に辺りに闇を取り戻した。ぼうっと仄かに光るカインの剣は、魔族でもなかなか使いこなせる者がいないと言われる、魔法剣である。
「どうやらこの辺りに魔物を操る魔族がいるらしくて、国に報告があり調査に来ていたのですが、まさかルシア様にも巡り合えるとは」
剣から発せられる茫々たる光に浮かんだカインの顔を見ながら、ルシアは顔をしかめた。