わたしの姫君
「なぜですか! 隊長はいつもルシア様を見つけても逃がしてしまわれる!」
「……ルシア様が自ら国に帰ってこなければ、意味がないんだよ」
「私にはわかりません!」
「ルシア様は女王候補なんだ。……意味はわかるかい?」
カインの言葉に、ヴァスタは唇をかみしめ不服そうに頷いた。
「すまない。私みたいな隊にいるより他の――」
「隊長。私は他の者たちと例の魔族の捜索に入ります。隊長も落ち着いたら来てください」
すでに森は本来の姿を取り戻し、濃い闇をつくりだしている。
カインの言葉をさえぎって、有無を言わせない態度で言い捨てると、ヴァスタは頭を下げて走り去っていった。
残されたカインは、風もない森の中で静かに目を閉じる。
(私は貴方が女王になるのを楽しみにしているのですよ。ルシア様)
目を開けたとき、月は厚い雲に覆われ、辺りは一層強い闇が落ちていた。