わたしの姫君
「ルシア……」
「さっきの言葉は忘れて。困らせてごめん」
俯き加減に呟くと、ルシアの長い髪が表情を隠した。宙に浮いたルシアの足が、地面から遠く離れていく。リュクスはさらに力強くルシアの手首を握った。
細い体で、どこにそんな力があるのか不思議なほどの力強さだ。ルシアは驚き顔を上げた。
「一緒には行けないけど、でも、僕はいつだってルシアの味方だから! 困ったら僕を頼って。何があっても僕だけは裏切らない。ルシアのことをずっと考えてるから!」
今度こそ本当に泣き声に聞こえた。
断られたことも、これから一人だということも、何もかもがどうでもよくなった。これ以上リュクスを見ていれば、一度決心した気持ちが揺らぎそうで、言葉にならなかった思いの代わりに頷くことで終わらせた。
風がルシアの周りで走り回るように起こった。
同時に地面に絨毯を作っていた花びらが、ルシアを中心に放射状に飛散する。散った花びらがルシアを囲い、円を描き始めた。
勢いを増し、目も開けられていられないほどの砂埃が舞うと、リュクスはたまらず目を瞑る。その瞬間、握っていたはずのルシアの腕がするりと抜けた。
声を上げる間もなく、ルシアはリュクスの前から姿を消した。