白いツバサ
吹き飛ばされたパイロは一瞬気を失っていたのか、頭を振りながら体を起こす。

羽帽子の男は、ゆっくりとパイロに近付いた。


「だ、旦那、相手をお間違えで……」


その言葉が終わらないうちに男はパイロの襟首を掴み、無理やり引き起こす。


「だ、旦那!?」

「2発目!!」

「ぶぼっ!!」


宙吊りになったパイロの頬に、再び男の拳が突き刺さる。


「3、4、5!!」

「へぶおぶもげらっ!!」


なおも連打を浴びたパイロは、5発目のときに再び宙を舞った。


「べぶぅ!!」


そして、潰れた蛙のような格好で、地面に叩きつけられる。


「ア、アンタ!!」


ボルケーノが慌てて駆け寄った。


「うう……」


抱き起こされたパイロは、虚ろな目でうめく。

ボルケーノは、鋭い瞳で羽帽子の男を睨んだ。


「アンタは、何てことしてくれるんだい!!」


しかし、男はその言葉には答えず、ゆっくりとパイロに近付いていく。


「立て……まだ、あと5発残っているぞ」

「あ、ちょ……アンタ!」


そして、ボルケーノの腕の中のパイロの襟首を掴むと、無理矢理に引き起こした。


「ちょ、ちょっと、やめておくれよ!」


ボルケーノは、慌てて2人の間に割って入ろうとする。

動かすその手が男の羽帽子に当たり、帽子はふわりと宙を舞った。

不意に覗いたその髪は、アクアと同じ金色だ。


「やめてくれだと……?」


男は、静かに口を開いた。

押し殺したような声。

だが、それでも溢れ出る怒りの感情。


「どの口が、そんなことを言える……」


男が言葉を発する度に、金の髪はゆっくりと逆立っていく。

それはまるで、獅子のたてがみのようだ。


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