アパートに帰ろう
「じゃあ、君はサーカス団でその技を身につけたのかい?」

「はい」



食事を終えて、私の今までのことをたずねられた。

もっぱら、私の能力について興味があるらしい。


語学は?
武術の心得は?

そんなことをたずねられた。


けど、なんていうんだろうか、この男の子の威圧感は。


話し方といい、その内容といい、どう考えても子供のそれじゃない。



「しかしサーカス団員に、そんな優秀な人がいたなんて。その人の名前聞いてもいいかい?」

「名前ですか?……たしかローレンス・ラドフォードです。私を娘のように可愛がってくれました」

「ローレンスか!なるほど、生きていたんだな。懐かしい。彼なら納得だ。多才だったからなあ」



男の子は興奮したように、頬を赤らませ、早口でそう言った。

身を乗り出して嬉しそうにしている彼は、子供らしい。


でも懐かしいって?



「あぁ、失礼。柄にもなく興奮してしまった。私と彼は同郷でね。幼なじみだったんだよ」

「は?」

「ん?あぁ、そうか、君がさっきから不思議そうにしていた理由はこれか。すまないね。変装をとくのを忘れていた」
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