アパートに帰ろう
ボスはクールにそう言い放った。

こんな簡単に教育係が決まってしまうなんて。

会話の雰囲気から、ボスがこの男を信頼しているというのがわかったけれど、男は乗り気じゃないらしい。


その証拠に怪訝そうに眉をひそめている。



「そんだけか?語学や格闘術は?俺はイヤだぜ。任務が減らされるのは」

「彼女は即戦力だよ。既に心得てるから必要ない。君にはしばらく夕方以降の任務を任せることにするよ」

「はっ!そりゃいい。俺の任務は減らされねーわけだな」



男の態度がコロリと変わった。

血だらけの服を見て、満足そうに仕事を片付けてきた、と報告に来ていたのを思い出す。



仕事が好きなのかな。


任務が減らされないとわかった途端、さっきまでの不機嫌さはどこかへ消え去り、今は笑ってさえいる。



「よし、引き受けてやるよ」

「ありがとう。……アンナ、紹介するよ。彼は麻武龍之介。ジャパンの侍の血が混じってるんだ。すごいだろ」

「へえ。サムライの!」

「ちげーよ。俺の父方の爺さんが日本人ってだけだ。なんでもサムライにすんじゃねーよ。……アンナ。ボスの言うことをあんまり本気にしないでくれよ?半分は冗談だ」



そう言ってニッと笑った麻武さんは、私の頭にポンと手を置いた。


血まらけのシャツと、鋭い目つきには似合わない優しい手だ。



「よ、よろしくおねがいします」

「よし。じゃあついて来い。早速案内してやるよ。じゃあなボス。連れてくぜ」

「あぁ、よろしくたのむ」



私は、ボスに一礼して、麻武さんの背中を追い掛けた。
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