アパートに帰ろう
食堂、トレーニングルーム、会議室、図書室、簡易病院。


ビルの中には様々な施設があった。地下まである。


私がキョロキョロしているのを見て、麻武さんはおかしそうに笑った。



「なんだ。オマエ、えらく珍しがるな。前いたとこも、こんなモンだっただろ?」

「サーカス団にはこんないろんな部屋なかったです!」

「そうか。てっきり軍の養成所かどっかだと。そりゃ珍しがって当たり前だな。じゃあもっとゆっくり見てくか?」



麻武さんは、感心したように頷いて、歩くスピードを緩めた。

彼にお礼を言って、珍しい部屋たちを見渡す。


爆薬庫や毒物調合室、特殊な響の部屋も多かったが、すごいところに拾われたのだと胸が高鳴った。


通り掛かる白衣やスーツ姿の人達に挨拶しながら、ビルの中を歩き回った。



「うっし、これで案内は終わりかな。あとはオマエの部屋探ししねえと。空き室が何個かあるからキレイなとこ探そうぜ」

「はい!」



この数十分の間に、麻武さんが、なんというか兄のように思えてきた。

ちょっと怖いけど、優しくて、いろんなことを丁寧に教えてくれる。



「おい、ここなんかどうだ?けっこー片付いてるし。広いし」



空き室のドアをかたっぱしから開けていた麻武さんが言う。

私が頷くと、さっそく掃除をはじめた。



雨がやんでいるのを確認して窓を開け、埃を落とし、ボスが手配してくれた新しいベッドや家具を運び込む。

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