アパートに帰ろう
麻武さんは、それだけ言うと去っていった。

私は渡されたメモを確認してみる。




「9時にボスの部屋……?」



もう10時だけど。

麻武さん、もしかして渡し忘れてた?


………。

ボス怒ってるかな。いそがなきゃ。


私は慌てて服を着替えて、髪を整えると、早足で階段を駆け上がった。



「失礼します!遅れてすみません!」

「あぁ、アンナか。寝坊でもしたのかい?」

「い、いえ。その」

「あぁ、麻武が渡し忘れたのか。悪かったね。急ぎじゃないから気にしなくていいよ」



にこりと笑った今日のボスは20歳くらいに見える。

毎日、違うボスの見た目にはどうも慣れない。



「じゃあさっそく初任務の話だけど」

「はい」

「今日の19時からの、外務大臣主催のパーティの警備をお願いしたい。ウチの組織からは君ともう1人を派遣することになってる」

「もう1人?」

「あぁ、君と歳が近いから仲良くやれるはずだ。彼は任務帰りに直接君と合流することになってるから、12時に中央街のカフェに行ってくれ」

「わかりました」

「じゃあ、よろしくたのむ」



資料を受け取って、部屋に戻る。

中央街には、昨日麻武さんと生活用品を揃えに行ったから、道はわかっている。


ちょっと早めに行っておこうかな。


小さな鞄に資料を詰め込み、街に向かった。
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