アパートに帰ろう
「マイケル!あけて!おれだよ!おれ!」



ガンガンと扉を叩くトム。しかし向こうからの返答はない。



「あれ?おかしいな。留守なハズないのに。マイケル!いるんだろ!開けて、おれだよ!」

「……うるさい」

「マイケル!」



扉があいて顔をだしたのは不健康そうな男だった。

心底いやそうな顔をして、トムを見ている。



「おまえ、またパスワード忘れただろ。毎回、こんなに叩かれたらドアが壊れちまう。まったく」

「ごめんごめん。おれ、そーいうの覚えるの苦手なんだよ」

「……まあいい。用件は?」

「おれとこの子に正装を一式。あとヘアメイクをおねがい」

「わかった。その目障りな頭ボウズにしてやるよ」

「まじで?手入れがラクそうでいいね」

「………」



トムの無神経な発言に、男はため息をついて、私たちを中に案内した。

トムはそのままマイケルさんに連れていかれ、私は美人で優秀そうなスタイリストさんたちと、ドレスを選ぶ。

決まったのはクリーム色の、ふわふわなドレス。

髪の毛を結いあげられ、生まれて初めてのメイクをされた。



「アンナちゃん。かわいい。お嬢様みたいになったわね」
「クリーム色のドレス似合ってるわよ」
「あたしの髪飾り貸してあげる。きっと似合うよ」



鏡に写った自分、なんか不自然。見慣れてないからかもしれないけれど。

こんな服もはじめてだし。笑われないかな。



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