アパートに帰ろう
「いやあ、見違えたね」

「そっちこそ」



ボサボサだった髪を整えられたトムは、タキシードを難なく着こなしている。

これならパーティに紛れ込んでも問題なさそうだ。


私はなんだか自信がない。ヒールのせいで、足元さえおぼつかないのだ。



「じゃあ行くかー。地図は頭に入ってる?」

「もちろん」

「そう、さすがだなあ。おれはあんまり。……いや冗談だよ。そんな睨まないで」



トムはへらへらと笑うと、マイケルにお礼を渡し帰ってきた。

私もお姉さんたちにお礼の挨拶に言く。



「トムさんもアンナちゃんも綺麗よ」
「会場の視線を集めちゃうかもね!」
「トムさん。もっと格好に気を使ったらいいのにね。いつも赤ジャージにボサボサの黒髪なんだから」
「アンナちゃん言ってあげてよ」



好き勝手にそう言って笑うお姉さんにお辞儀をして、店を出た。


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