アパートに帰ろう
一緒に過ごしたのは9年間。


私は彼をダディと呼んで慕うようになり、彼も私を娘のように可愛がってくれた。



しかし私が16才を迎えた先月の末、血を吐いてダディは倒れた。


持病だったらしい。


ベッドに寝たきりになったダディ。


私の雀の涙程の給料で得ることができたのは少しの痛み止めだけだったが、その薬がなくなる前にダディの命は尽きてしまった。



"……アンナ。逃げろ。今のオマエなら、ここを抜け出せるはずだ"


"こんなところで、一生を終わらすな"


"西のテント裏に、街に繋がる隠し通路がある。昔俺がオマエに飯をやった場所の近くの茂みをさぐれ"


その夜。私は追っ手を振り切り、命からがら街へと逃げたのだった。



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