アパートに帰ろう
「おいガキ!なんとか言ったらどうなんだ。俺様にぶつかっといて謝りもしないのか?」

「……ご、ごめんなさいっ!」



なんだろう、と目をこらすと前方に、大声で怒鳴る男と衿(エリ)をつかまれて震えあがっている男の子。


どうやら男の子はいちゃもんをつけられているらしい。


周りの人間達は、傘に顔をかくし、見て見ぬフリをして通り過ぎていく。


男が手を振り上げた。


しかし周りの人間は誰ひとり助けに入ろうとしない。


なんて街なの。

私は駆け出した。



「おら、ガキ。謝ってすむと思、……ウガッ!」



ステップを踏んで、男の腹の隙に潜り込み、みぞおちを渾身の力をこめて殴る。

吹っ飛んでいった男は、泡を吐いて倒れた。



「だいじょうぶ?」



男に怒鳴られ震えていた男の子を振り返る。


しかし、そこにいたのはナイフを握りしめたまま、目を見開いて固まっている男の子だった。


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