アパートに帰ろう
ニューマイホーム
「ただいま」



サリバン通りの最奥に建つ、黒いレンガ造りのビルに入る。

ビショ濡れの僕を見た部下が顔色を変えて寄ってきた。



「ボス!どうしたんですか!そんなに雨に濡れて……」

「すまないが、タオルを用意してくれないか。傘をあげてきてしまってね」

「……傘を、誰かにあげられたのですか?」

「あぁ。何か文句があるのかい」



僕のことばに目を見開いた部下を、爽やかに見てやると、彼は慌てて頭をさげた。



「申し訳ありません」

「謝らなくていいよ。それより温かいスープが飲みたいな。タオルはもういいよ。シャワーを浴びてくるからスープの準備をしておいて」



すっかり雨に濡れた服を洗濯カゴにほうり込み、シャワールームに向かう。

降り注ぐ温水で、雨の生臭さと指先の凍えを洗い流した。



「どうぞ」
「ありがとう」



新しい服に着替え髪を乾かし、部下からスープを受け取る。

スプーンを口に運びながら考えたのは、先ほど見つけた少女のことだ。



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