Quiet man
翌日・・。

俺の"一刻も早く"って

気持ちはスゴイと我ながら思う。


もう・・仕切る、仕切る。


不動産屋さんには昨日のうち

連絡してあったからホント、

アッと言う間に事が片づいた。


昼過ぎにはもう京都駅に着く

なんて夢にも思わなかったし。



「冷凍みかん買って。」



売店の前で急に止まったナギが

キラキラした目で俺に強請った。



「うん。」



何を欲しがるかと思えば・・と

少し可笑しかった。


昔、給食のデザートになってた

赤いネットに縦に入ったヤツだ。

そう云えば初めて彼女にものを

オネダリされた。例えそれが

何百円の物でも嬉しいもんだ。



「東京では売ってないやろ?」



席に着くと早速それを

嬉しそうに剥き出してる。


「はい。」


俺は普段、果物など自分からは

食べないがナギの手で剥かれた

それを彼女の指によって口元に

差し出されるとついパクついた。


懐かしいシャリシャリ感、以外

と酸っぱさがなく、結構甘い。



「あたし、単純かも。」

「え?」


「お腹に"居る"って解ったら、

どうしても食べたくなってん。」


「・・あぁ!」



ばっと、みかんを袋ごと奪う俺。

ちょっとばかし、

取り乱しちまった。



「ナギ・・確か、体を冷やす

食べ物は良くないんじゃ・・?」


「ああ!」



手に持ってた冷凍みかんを膝の

上に落として本人が凍ってる。



「「 落とし穴かも・・。 」」



やはり

こう云う時には経験者が要る。


年の功は亀の甲・・いや違った、

"亀の甲より年の功"だっけ。


ナギは・・何と云うだろうか?

< 235 / 254 >

この作品をシェア

pagetop