虹色列車
葉奈月編



物心ついたときにはもう既に人生に希望なんて抱いてなかった。


私は欲しいものは何でも手に入った。

ただし、"欲しい物"に限る。
私が本当に欲しかったのはもっと別にある。

家にはいつだって家政婦がいる。


ワタシガホシイノハカセウフジャナイ。


家にはいつだって執事さんがいる。

ワタシガホシイノハシツジジャナイ。


庭に行けばいつだって庭師がいる。

ワタシガホシイノハニワシジャナイ。


部屋にはいつだってたくさんのぬいぐるみがある。

ワタシガホシイノハヌイグルミジャナイ。



偽りの笑顔でこっちに来る家政婦も執事も庭師も
絶対に動かないぬいぐるみなんていらない。

忙しいなんて嘘なの分かってる。
私と一緒にいたくないのも知ってた。

でも…



でも、それでも
嘘でも
偽りでもいいから、

一緒にいて欲しかった。



アイシテル
って言われたことないよ。
みんな普通に言われてるはずなのに…





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