万年樹の旅人
人々の言葉に、鬱屈とすることはなかった。またか、と諦めにも似た感情だけがあった。だが、だからといって悩まないわけではない。なぜ自分は違うのだろうという思いは常にあったし、普通の外見だったならば、と想像する日もあった。すでに形成されている自分、という存在を替えることなどできはしないのに。
しかし、触れて欲しかった。訊いて欲しかったのだ。そして、異質な容姿を笑い話にしてほしかったのだと、初めて自分は自覚した。
リュウの言葉でどれだけ救われただろう。どれだけ安らいだだろう。
彼はまさしく太陽のような存在だった。草木や花が、太陽に向かって伸び成長するように、人もまた、リュウの裏表のない明るさに惹かれ、集まった。ジェスもいつの間にか、自然とリュウの隣にいることが多くなっていったし、所属を決める試験の結果で、同じ所属だと知ったときは、喩えようもない悦びを感じた。それが最低ランクだとしても。
――なんだ、お前も意外と弱いんだな!
そう言って笑いあった日は、もう何年も前だというのに、昨日のことのように鮮やかだった。
リュウの背を追い越した向こう側に、城門の影が見てきたのは、鐘が三度、辺りに鳴り響いたときだった。