恋愛の条件
「片桐さん……あの、少し、離れて……?」

壁にべったりと張り付いている奈央はこれ以上逃げ場がない。

「何で?」

「何でって……」

奈央は周りの社員を見渡した。

「みんな酔っ払って気づいてないから……」


(う……。耳元で話さないでぇ……)


「多分俺が今君にキスをしたところで誰も気づかないよ?」

「///っ///」


(キレイな顔が…う、動けない……)


頬に触れていた指が唇へと移動する。


(修…助けて……)


ふと頭を過ぎるのは修一の意地悪く笑う顔。


『黒沢さんサイバーマイクロ社に彼女いるんですよね?』


奈央の脳裏に五十嵐の言葉が鳴り響くと同時にその笑顔がきえた。


(このまま……この人に流されたら楽になれるかなぁ……)


もう何も考えたくない、そう思った。

力が入っていた奈央の手が緩み、片桐に身体を預けそうになった時、急に横から肩を引かれた。


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