恋愛の条件
「……修?」

「黒沢?」

二人同時に口を開き、自分がつい「修」と名前を呼んでしまったことに気付き奈央は焦った。

「片桐さん、部長がさっきからお呼びですよ?」

上司だというのに片桐を見下ろすように修一は立ったままだ。

「またあの人か……」

「ずっと誤魔化していたけど、限界です。行ってあげてください」

「性がない。じゃぁ、広瀬さん、また後で?」

奈央の肩にポンと手を置き、片桐は何事もなかったようにその場を去っていった。

残された奈央と修一の間に沈黙が流れ、奈央はこの気まずい空気に耐えられず視線修一から視線を逸らせた。

できればそのまま去って欲しい。

奈央の想いとは裏腹に、修一は機嫌が悪そうにドカッっと彼女の傍に座った。

「だ、大丈夫?」

「何が?」

「酔っているのかと思って……」

「ビールぐらいで酔ったことねぇよ」


(何か…すごく機嫌が悪い?)


「なぁ、おかえりの一言くらいないわけ?」

「何でわざわざそんなこと言わなきゃいけないのよっ」

自分も一週間連絡一つよこさなかったくせに、と口に出しそうになり、心に押しとどめた。

「へぇ、偉いもんだな」


(何か、修いつもと違う?さっきまで機嫌良く飲んでたくせに。何で私のところでこんな機嫌悪いのよ……)


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