恋愛の条件
「風邪ひくから、帰るぞ?」

背後を振り返ると、片桐が傘をかかげて立っていた。

「何一人で勝手に帰ってんだ?普通ちゃんと挨拶していくだろ?」

「片桐さん……」

「コートも忘れて」


(何で……?何で片桐さんが?)


「どうして、ここに?」

「ひどい顔だな……」

「だって、雨で化粧が崩れて……」

「そんなことを言っているんじゃない……」

片桐は奈央を優しく見つめた。

「今にも泣きそうな顔して、美人が台無しだろ?」

「………」

片桐は奈央にコートをそっとかけ、濡れた髪に優しく触れた。

「どうして?」

「さぁ、感かな?」

いつもの自分なら笑い飛ばしてこのまま一人で帰れる、お疲れ様でしたって帰るのよ、と自分に言い聞かせる。


(この人じゃない……優しく笑いかけて欲しいのは……)


どうしてこのタイミングなのだろう?

奈央はいつの間にか片桐に抱き寄せられ、その胸でむせ返るように泣いていた。

片桐は何も言わずに、自分の胸にすがりついて泣く奈央を優しく抱きしめた。


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