恋愛の条件
こんな風に泣いたのは何年振りだろか。

多分、3年前のあの日以来。

でも、あの時はすがって泣く場所なんてなかった。

温かい胸の存在があるなんて知らなかった。

降りしきる雨の中、片桐の指が優しく奈央に触れる。

「ごめんなさい……こんなこと……」

「何故謝る?」

「私……」

「別に何も言わなくてもいい」

奈央を抱く片桐の腕に力が入る。

「何かあんた、ほっとけないなぁ……」

「えっ……」

「生意気に噛みついてきたかと思えば、こんな風に今にも崩れそうになる……」

「…………」

「今度は誰も知っているヤツいないな……」

「えっ……」

奈央が顔を上げると、片桐の唇が優しく奈央の唇に触れた。

「かた…ぎり、さん?」

突然のことに身体を引こうとする奈央の背中に手を回し、もう一度その唇を重ねる。

「ん……んぁ……」

最初優しく触れた唇が強く奈央に吸いつき、激しさを増す。

徐々に奈央の警戒心を押し開き、片桐の舌が中へと侵入する。


(ヤダ、この人…すごくキスが上手い……


 ……トロけそう)



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