恋愛の条件
「おはよ~ございま~す!」

空気の読めない能天気な五十嵐の声がオフィスに響き渡る。

「よう……」

「チーフも広瀬さんも早いですねぇ?俺二日酔いですよ~」

「おはよう。五十嵐君はすごく飲んでたものね?」

奈央は五十嵐に悟られまいと優しく笑い、熱くなった手をそっと隠した。

「そう言えば、広瀬さんいつの間にかいなくなって!いつ帰ったんですか?」

一緒に飲みたかったのに、と五十嵐が拗ねた子供のように問い詰めてくる。

「え?うん……ちょっと疲れてたから先に帰らせてもらったの」

「あっ、そっかぁ。体調悪そうでしたもんね?もう大丈夫なんですか?」

「ええ……」

気分は最悪だけど、と心の中で呟きパソコンを立ち上げる。

早くに出社していながらパソコンも立ち上げてなかったとは、と奈央が焦ってパスワードを入力ていると、他の社員に続いて山内課長がオフィスへ入ってきた。

山内課長はデスクに着くや否や、完全モードに切り替わりフル稼働する。

楽しい飲み会の次の日の朝は、名残を楽しみながらゆっくりと、なんて甘い考えはないらしい。

二日酔いの社員が多い中、そんなものは家にでもおいてこいと無言の圧力をかけ、次々と支持を出していく。

若い社員を潰すように飲ませていたのは、この課長だというのに。


(すごっ……確か課長もかなり飲んでいたと思うけど。これで二児の母なんだもんなぁ)


奈央は唖然とこのサイボーグ課長の動きを見守りながら、自分もしっかり仕事に集中しようと気合を入れた。

が、次の言葉でその決意も挫かれる。


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