恋愛の条件
奈央は困惑した。

修一の表情から奈央をからかっている様子はなかった。

恍けているようでも。

「……さん?広瀬さん?」

「何よっ!?」

「えっ、あの……」

頭の上から名前を呼ばれ、考え事の邪魔をしないで、とつい荒い口調になったことに気付きハッと顔を上げると、酷く焦った顔の五十嵐が立っていた。

「あっ、ごめんなさい。考え事をしていて……五十嵐君何?」

「いえ、片桐キャップが来られましたけど?」

「えぇぇっ!?もう?」

まだ何一つブリーフィングの準備をしていない、と慌ててメモリースティックをパソコンに刺す。

「何声を荒げてんだ?」

ドアの傍から聞えてきたのは、室内温度を5度下げる片桐の低い声。

「いえ、おはようございます……」


(こ、心の準備が……ブリーフィングは10時からでしょぉぉぉ?)


「広瀬さん、ちょっとお願いしたいことがあるからいい?」

「は、はい……」

5度下がる片桐の声に、周囲にいた五十嵐や佐野は総務に用があるだの、コピーだの理由をつけて逃げていく。

別の意味で二人っきりにしないで、と奈央は心の中で叫んだ。


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