恋愛の条件
室内温度が一気に10度上がった気がした。


「あまりそんな期待した顔するなよ。こっちの理性が抑えられないだろ?」

「///き、期待なんて……」

期待は、していた。

だが、仕事に集中しろと言われて身構えていないところに、軽くジャブを受け、奈央の頬が一気に熱くなる。

「ほら?すぐに顔に出る」

「か、からかわないでくださいっ……」

「別にからかってない。そんなに構えなくても何もしないから仕事に集中しろ」

「ハイ……」

「別に俺は急いでないからな」

片桐の手がそっと奈央の髪に触れる。

その仕草がすごく自然で厭らしくなく、つい奈央はその手に頬を委ねたくなる。

「言ったろ?ちゃんとあんたを手に入れたいって?」

「片桐さん……」

「じゃぁ、俺は部長と打ち合わせがあるから、後で?」

「はい……」

片桐は元のクールな表情に戻り、オフィスを後にした。


(どうすればいいの?し、心臓に悪い!
こんなこと男の人に言われたの、初めてかも……)


一体今自分に何が起こっているんだろうか。

奈央は一生懸命頭の中を整理した。

朝は修一に心を揺さぶられ、今は別の男に心臓が止まるくらいドキドキしている。

傍から見たら、会社の中で一、二位を争う二人の男に言い寄られ、最高のモテ期到来といった感じだろうか。

そんなくだらないことを考え、更に虚しくなるだけだった。


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