恋愛の条件
修一と片桐----

二人を交互に見て改めて思う。

全くと言っていいほどタイプが違う。

対極なのだ。

片桐は石橋をたたいて慎重に事を進める。

変化球や替え玉を使ってでも絶対にストライクを取りに行くタイプだ。

だから全てが完璧。

逆に修一はものすごく直球。

斬新なアイディアも構成もものの数分で閃いたかと思うと、 いつの間にか実行している。

でもその分リスクも大きいから、絶対に誰かのフォローが必要である。

片桐がちゃんと修一のフォローをしている。

修一の出す草案を素早く消化して確実なものへと仕上げる。


(この二人ってすごくいいコンビよね?ホント全然違う二人……)


自信家で失敗を恐れず真っ直ぐ進んでいく修一に惹かれた。

強引で俺様なのにそれでいて優しいところもあって。

3年前、修一のそういうところがすごく好きだった。

今でもその気持ちは変わらない

奈央はチラっと片桐を見た。

本当に大人。

スーツの着こなしひとつ取っても片桐は完璧なのだ。

そんな人がどうして自分を?

あんな風に微笑まれると全てを預けたくなってしまう。

3年前の自分だったらありえなかった。

想いは叶わなくてもそれでも迷わず修一を選んでいただろう。


(でも、女って変わるのよね?恋愛に対する考え方が感情だけではついていけなくなる……)


やっぱり自分を一番愛してくれる男(ひと)に甘えたくなる。

先の見えない迷路に入りこむより、ついキレイに補正された道路を歩きたくなる。


(もういいかなぁ……私、結構頑張ったよね?)


どんなに心が修一を求めてもそれに彼は応えてはくれない。

見返りのなり恋愛にぶつかっていくには、もう余りにも臆病で、打算的になりすぎた。


(もうね、辛いんだよ……)


奈央は二人のディスカッションを聞きながら、泣きそうになる心を必死で我慢しながらメモを取り続けた。





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