恋愛の条件
12.女の幸せと仕事
奈央は悩んでいた。

忘れようとしても忘れられなかった男の部屋で頭を抱える。

今、3年ぶりの幸せな気分に浸ろうとした矢先、新らたな困難に直面していた。


(仕事を取ろうか、男を取ろうか……悩んでます!すごく悩んでます!)


神様は意地悪だ。

奈央は心の中で罵倒した。

上手くいかない時は全てがうまくいかないのに、どうして幸せは一つ一つやってこないのだろうか。

一気に全てが押し寄せてきて、奈央は戸惑うばかりだ。

3年前だったら躊躇なく修一と一緒にニューヨークへ行くことを選んでいた。

ただ一緒にいられればいいと思っていた。

確かに医務室では一瞬ついて行こうと思ってしまったのは事実。

あんな風に修一にストレートに求められて、嬉しくないわけがない。

だが、社会人6年目にもなると色々考えることも多い。

そんな簡単に『はい、ついて行きます』と言うわけにはいかない。

まず山内課長には何て言えば良いのだろうか。

奈央はますます頭を悩ませた。

「結婚はしてもらえませんが、黒沢チーフについてニューヨークに行きますからチーフのポジションは辞退させていただきます。ついでに会社もやめます」とでも言えばいいのか。


(どんなバカ女よ……)


今時先も見えないのにキャリアを蹴ってまで男のために全て捧げるというわけにはいかない。

そんなこと、まず会社よりも親が許さない。

好きという気持ちだけではどうにもならないことがあるのだ。


(こんなんだから、私……片桐さんにグラっときちゃうんじゃないっ!!)


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