恋愛の条件
奈央は修一のマンションで夕飯を作りながら彼の帰りを持った。


(遅いなぁ……メールくらいくれてもいいのに……)


鍋の底をかき混ぜながら、案外こんな風に修一の帰りを待っているのもいいかもしれない、と奈央は思った。

企画書を考えている時のように楽しい。

意外に自分は専業主婦に向いてるのだろうか、と自分の新妻姿を想像する。


(う~ん……3日で飽きそうだわ……4日目から外食してそうだからヤメよ……)


その時ガチャっと玄関ドアの開く音がした。


「ただ今~」

「お帰り。遅かったね?」

奈央は新妻っぽく玄関先まで修一を迎えに行く。

コートとかばんを受け取り、あぁ、ホントに新妻みたいだと独り夢心地になる。

「WILのプレゼンが明日だから準備が中々終わらなくて」

「ごめんね、先に帰らせてもらって。でも大丈夫なんでしょ?」

「誰に物言ってんだ?当たり前だろう?」

「ハイハイ……そうよね?」

「何?ご飯作ってくれたんだ?」

「まぁ……暇だったし?」

新妻気分に浸っていたことは隠し、こんなこと何でもないのよ、と普通に振舞う。



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