恋愛の条件
「もう歩けないでしょ?」

「だぁ~いじょうぶ~」

「全く世話のやける。片桐を呼ぶわ」

「世話って、ひどぉい。私の方が年上なのに……」

「歳だけはね?」

「沙希、片桐さんと順調そぉだね~」

「何でそこで私の話?」

沙希が露骨に嫌そうな顔をする。相変わらずプライベートを検索されるのは嫌そうだ。

「片桐さんも沙希がすごく愛しいって感じだし、いいなぁ、みぃ~んなしてっ!」

「あれは趣味が悪いのよ」

そう毒を吐く親友の顔は、どこかとても幸せそうで満ち足りていた。

あぁ、彼女は本当に満足しているのだ、と奈央は感じた。

「沙希のバカ……」

「ハイハイ」

沙希の優しい声を聴きながら奈央は泣きたくて性がなくなった。

自分はこんなところで酔いつぶれて何をやっているのだろうか。

幸せそうな友人たちにあてられ、虚しくなって。

謝らない、なんて言ってみせてもう修一の腕が恋しくてたまらない。

最後に見たのは、どこか傷ついたような、悲しい修一の顔。

あぁ、そんな顔をさせたのは自分だったな、なんて今更ながら反省する。

頬を赤らめ嬉しそうに山下を見つめる佐野。

その佐野に優しく包むように微笑む山下。

自分たちもそうありたいと思うのに……

何万マイルも離れたニューヨークに修一を置いてきたのは奈央。

その温もりに触れるには、今はあまりにも遠すぎる。

虚しくて、寂しくて-----

修一が恋しくて、奈央は机に伏せたまま重力に任せるように重い瞼を閉じた。

微睡む意識の中、優しく自分の名を呼ぶ声が聞こえる。

髪をすかれ、優しく頭を撫でられている。

それがあまりにも気持ち良くて、奈央の意識はそこで途切れた。




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