恋愛の条件


♪♪♪♪~


聴きなれた携帯の着信音が鳴り響く。

大好きなエリック・サティーの軽やかなメロディー。

だが、今の奈央にはその音すらも煩わしい。

ベッドの中に入ったまま、奈央は気怠さを振り払うように両手を伸ばした。

「んん……」

一生県命携帯を探すが、手に当たるのは上質なクッションの感触だけ。

奈央があたふたしていると、携帯の着信音はプツリと消えた。

何とかぼんやりする頭だけを起こし、周りを窺う。

そして眠い目を擦れば、寝ぼけている奈央にもわかる、ここがホテルの一室であることが。しかも、スウィートクラスではないだろうか?

自分はまだ夢の中にいるのだろうか?

身体を起こそうとすると、腹部に何か温かいものがのっていることに気付いた。

その腕の先を辿れば、何も身に着けていない、愛しくてやまない男の裸体が瞳に映った。

「修……」

心にジワッとこみ上げてくるものがあり、昨夜のことは夢ではなかったと悟った。

衝動的に、そっとその端正な顔に指を這わせる。

長い睫にすっと伸びた鼻梁。肌は女の奈央ですら羨むくらいキメが細かい。

うっとりとその寝顔を見つめていると、回されていた腕に力がこめられ、ぎゅっと抱きしめられた。



< 367 / 385 >

この作品をシェア

pagetop