恋愛の条件
「奈央、悪かった」

低く零されたそのことばに、何を意味しているのかすぐに気付く。

何も言い返さずにじっと修一を見つめ次に発せられる言葉を待った。

「俺、奈央を手に入れて、ちょっと過信してたのかもな。奈央はどんなことがあっても俺から離れないって。結婚のことはちゃんと考えているから。明日にでも、というわけにはいかないけど、上には話を通してあるから」

「----え?」

初めてそんなことを言われ、逆に奈央の方が動揺してしまう。

「当たり前だろ?予定外にニューヨークオフィスが忙しくなった上に、俺の出張も多くなって中々進められなかったけど、ちゃんと考えているよ。ただ、籍を入れるだけってことはしたくないんだ。奈央を縛る為だけに結婚するみたいでケジメがつかないからな。だからもう少し待ってくれ」

「…………っ」

「奈央?」

「ありがとう、修」

胸がいっぱいになって、そんなことしか言えない。

修一はちゃんと奈央の不安も、焦りも分かってくれている。

籍だけでもいいから、そんなことを考えていたのは奈央の方だ。

忙殺されていく毎日に疲れ、不安な気持ちを払拭するために籍だけでも、と。

「紙切れ一枚」で彼を縛りたかったのは、ずるくて弱い自分-----




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