恋愛の条件
「あのね、結婚に焦っているというより、私が一人不安になってただけなの。妹の結婚がそこへきたでしょう?ホームシックもあったのかな?家族や友達に会って、皆の幸せそうな姿を見ていたら、なんかすごく自分がバカなことしたって思えたわ。一人で悶々と考えていたのがバカみたい」

「でも、それは俺に責任がある」

「修に?どうして?」

「ニューヨークに経つ前に山下に言われたよ。家族も友達もいない中一人で行くのは大変なんだって。その時俺は一笑に付して、俺が寂しい思いなんてさせないって断言していたのにな」

修一は思い出したように自嘲する。

そんな修一に奈央は、ちがう、と首を横に振る。

今、ニューヨークオフィスが忙しいことも、修一だけでなく奈央も追い立てられるように仕事漬けな毎日なことも、ちゃんと納得しているつもりだった。

その道を選んだのは奈央自身なのだから。

仕事と恋愛、両方の幸せを掴み取る、そんな風に意を決して修一についていった筈なのに、ちょっとの隙間風に心が揺れてしまった。

「弱気になっていたの。私らしくないよね」

「奈央、後悔してないか?」

その問いに奈央は一瞬瞠目する。

いつも強気の修一がそんなことを言うなんて----

「修、そんなこと絶対に言わないで!後悔なんてしていない。友達も家族も捨てて修の傍にいたいと思ったのは私自身なんだから!」


捨てるとまではいかないが、修一を取ったのは間違いない。


(ごめん、お父さん、お母さん、そして、沙希!)


奈央は心の中で手を合わせ、うるうると瞳を潤わせて修一を見つめる。

「ごめんなさい。軽率な行動を取って。何も言わずに日本に来てごめんなさい。性欲処理だなんて思っていないの」




< 373 / 385 >

この作品をシェア

pagetop