恋愛の条件
「パテーションで区切ってあるし、他からは見えないわよ?こういう時は、スカーフじゃなくて奈央みたいにタートルネックにしなさいね」

「ぶっ……」

魚沼産健康豚のジューシーでもちもちの触感をひとり楽しんでいた奈央は、喉を詰まらせそうになる。

どうして沙希にわかったのだろうか、とつい無意識にタートルネックを正す。

「どうしてこう同じ反応するかなぁ……」

ニヤリと笑う沙希に、奈央も佐野もしきりに首筋を気にして狼狽える。

佐野の首筋には赤い痕が一つ微かに残っている。化粧室に行くたびにファンデーションで一生懸命隠していたのだろう。

片や奈央のタートルネックの下から先は、みごとにキスマークの嵐。

妹の結婚式には留袖を着るが、首筋から鎖骨にかけて、花嫁と同じくらい白粉を塗りたくらなければいけないことは確かだ。

「まっ、いいんじゃない?幸せの証拠ってことで」

これ以上苛めては、箸も進まないだろう。

せっかくの美味なコラーゲンスープが煮詰まってしまう、と沙希は二人をからかうのをやめた。

が、不意に奈央が沙希に向き合う。

「ねぇ、片桐さんはそういうこと、しないの?」

「は?そういうことって?」

「えっ、だからその、お仕置きみたいなこととか、キスマークとか……」

沙希は一瞬嫌そうな顔をしたが、思い出したように口を開く。



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