はらり、ひとひら。


長らく入院していた母は数か月後に家に帰ってきたが、ひどくやせ細っていた。元から華奢ではあったけど、手足は棒切れのようになっていた。

歩くことはおろか立つこともままならないようで、移動はすべて車いす。美人と評判だったその顔には陰りが大いにさしていた。


原因は不明だが、心臓がひどく悪いのだそうだ。

歩けないのは夫を亡くしたことの心的ストレスもあるだろう、というのが医者の見解だったが、なんの因果かはわからないが─母と父が倒れたのは殆ど同時刻だったのだという。


「あんたのせいよ」
 
…夢の中で怖い顔をした母と、半分体を失くした父が俺を責めた。何か月もの間俺は悪夢に魘された。


婆様に「身体に障るから母には会いに行ってはいけない」と口を酸っぱくして約束されていたため、なかなか会いに行けなかった。


「…母上」


正直怖かったので、俺も黙って婆様に従った。

夢の中のように、母にまで邪険にされてはたまらなく寂しいから。


学校に行っては最低限の話だけして、宿題をやって、以前より妖を強く怨むようになったことも助長してか俺は強さを求めて、必死に修行に明け暮れた。


「妖は悪。弱いのも…悪だ」


何も守れず力なく立ち尽くすことが一番の悪─


そんな日々を続けていると、ある日使用人に呼ばれた。戸惑いながらも母の部屋に足を運んだ。


「奥様がお話をされたいと」



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