さらば、ヒャッハー


「あ……」


立ち上がった渉に、何の心境の変化があったか自身にも分からない。


大丈夫と言ったのに、双子を大変な目にあわせ、気分すらも害した。


藤馬とこれからもいる以上、渉とて“同じ目”で見られよう。


嫌われたと思った。それでつい立ち上がったにしろ、渉にはそうした自身の心理が分からないのだ。


――嫌われた方が、いいじゃないか。


もう、酷い目にあわせないは元より――これ以上、“周りを作って”どうする。


――だって、僕は。


「わたるんはん」


ビクッと肩が跳ねた気がした。声からして冬月か。見れば、頭を下げられ。


「また学園で会いましょかぁ。ほな、さいなら」


出された言葉に息を呑んだ。返事をする声も出ない。


< 106 / 237 >

この作品をシェア

pagetop