さらば、ヒャッハー
「あ……」
立ち上がった渉に、何の心境の変化があったか自身にも分からない。
大丈夫と言ったのに、双子を大変な目にあわせ、気分すらも害した。
藤馬とこれからもいる以上、渉とて“同じ目”で見られよう。
嫌われたと思った。それでつい立ち上がったにしろ、渉にはそうした自身の心理が分からないのだ。
――嫌われた方が、いいじゃないか。
もう、酷い目にあわせないは元より――これ以上、“周りを作って”どうする。
――だって、僕は。
「わたるんはん」
ビクッと肩が跳ねた気がした。声からして冬月か。見れば、頭を下げられ。
「また学園で会いましょかぁ。ほな、さいなら」
出された言葉に息を呑んだ。返事をする声も出ない。