さらば、ヒャッハー


下駄と呼べば分かりやすくも、的確ではない。


カテゴリ的な下駄にしても、一目見れば歯がないただの厚底。それを下駄とは捉え難い。


しかしながら、あれも一応は下駄だった。ぽっくり下駄と呼ばれる、主な使用者は舞妓や芸者と女専用のものだ。


ただの厚底。黒の漆塗りに、かかと部分には紅葉の川流れが描かれた、いかにもがつく女物だ。


それでも、藤馬には自然と似合っていると思えたのは、所詮は履き物風情だったか。色合いがピンクでない、スカートという女性の象徴でもない、ただの履き物をごくごく当たり前に、和装の男が履きこなしているというだけで、違和感がなかった。――ああして、すんなりと立てていること自体にしても。


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