さらば、ヒャッハー
その気になれば冬月の体に食らいつける、なのに、大きな口は冬月の頭上に、頭から丸飲みできる位置にあるまま、体勢としてはきつそうにも見えるそれで野槌は居続けた。
時折、「ぐぅ……」と呻く声が野槌から漏れる。何かに抗い苦しんでいるような。
「あー、神様なだけあるわな。普通は口すらも動かねえんだけどよ」
感心しながらも、へらへらした表情の藤馬は足でぐりぐりと地を踏みにじる。
秋月たちには何をしているか分からなかった。藤馬が踏んでいるのは土のはずなのに、先ほどのことで野槌がよりくぐもった声を出す。
ぐりぐりと土を――
「影……」
その上にある野槌の影を。
ただでさえ鎌首をもたげたような野槌の巨大な体、影とて長く。黄昏が終わる落日、傾いた日は影の長さをより長くしていた。