さらば、ヒャッハー
風がないのにざわめく白彼岸花。波打つ水面のようにゆったりと。
「これ、は――」
美しさの前に、懐かしさを感じた野槌が声をあげた。
馬鹿な、あり得ない、でも、正しくこれは彼岸の先の景色。
此方の岸からは見ることもたどり着くこともできない景色が、いま、ありありと野槌に伝わってくる。
無い眼球で見(感じ)た。
此処は顕世、入ったら出られぬ現世では其処を恋い焦がれることしかできずに。
其処は常世、入ったら出たくはなくなる隠世が、こちらに顔を出すなどとあり得ないのに。
――ならば、この神秘をどう説明すべきか。
神域の創成にして、現世への侵食。どちらとも不可侵と決め込み、混じり合うことがない水と油が、たった一人の男によって無理に混ぜられた。