さらば、ヒャッハー
――リン。
そんな、波紋めいた音だ。
落とした鈴というよりは、指先で振った鈴。どこまでも行くような、何にでも通るような、か細く透き通る鈴音が聞こえた。
どこからしたんだと秋月が辺りを見ても、玄関には靴箱があるだけ。靴箱の上にこけしと赤べこはあっても、鈴などついていない。
気のせいかと思う秋月だが、冬月とて聞いていた。ただ冬月の場合も気のせいかと、秋月に聞くことはしない。
草履を脱いで、中へ。ぎしりと軋む廊下は、建物の歴史が古く、リフォームさえもしていないことが窺えた。
秋月たちの武家屋敷には及ばないにしろ、一人暮らしにしては十分すぎるほどの広さと部屋数。
いくつかの襖を通りすぎて、やっと渉が手をかけた襖。